世界各国のごみ処理とリサイクル事情

21世紀に入って、日本ではリサイクルシステムが大きく進歩しました。それでは、海外ではどのような形でごみ処理が行われているのでしょうか。じつは、日本のように家庭でゴミを分別するという方式はあまり多くありません。ほとんどの国では、専用施設に集めて分別する選別センター方式が採用されています。

たとえば、環境先進国として有名なドイツや北欧の例を見てみましょう。ドイツでは、生ゴミなどの有機ゴミ、紙類、容器包装を資源ごみとしてあつかい、それ以外の家庭ごみはすべて有料で処理されています。選別は、選別センターでDSDという非営利企業によって担われています。一方、デンマークでは、ごみはすべて種類にかかわら有料で処理されています。といってももともと税金として徴収されているので、いちいち支払うわけではありません。この方式には、ごみの排出自体を減らすとともに、コストカットのために行われる不法投棄を減らす狙いもあります。

同じ北欧のスウェーデンでは、可燃ごみは燃料という考え方が徹底しています。そのため、自国のごみだけではなく、イギリスやイタリア、アイルランド、ノルウェーなどから年間200万tを超えるごみ処理を請け負っているほどです。それを廃棄物発電所で焼却して、発電と熱利用を行っているわけです。

この3ヶ国では、いずれもペットボトルやびんもデポジット制によって回収されています。これは、回収金額をあらかじめ商品に上乗せして、持ち込むめば返金されるというシステムです。ほかにも、リサイクルステーションや回収ボックスが街中やスーパーに設置されて、気軽に資源ごみを持ち込みやすいのも共通点です。

ほかにも、ドイツでは包装をシンプルにしてゴミそのものを出にくくする、デンマークではリユースしやすいようにPETボトルを分厚くする、スウェーデンでは新しい自治体やマンションでごみの分別方法を講義する、といったさまざまな工夫が見られます。それでは、アメリカはヨーロッパとくらべてどうでしょうか。

アメリカの場合、州によって大きな違いはありますが、基本的にリサイクルできないごみはほとんど埋め立てられています。これは埋め立て用の土地が確保しやすいのと、コスト削減の意味合いもあります。また、資源ごみの回収は行政ではなく、民間業者がスーパーなどでチケットと引き換えに買い取りをしていたりします。このあたりの意識には、ヨーロッパとの差がかなり見られるのではないでしょうか。

先進国以外のごみ処理事情についても見ていきましょう。ベトナムでは、ごみはほとんどごみとしてあつかわれていません。残飯は家畜のエサになるので、排出されるのは調理くずくらい。それも選別センターで堆肥化工場に送られています。また、埋立地では、ウェイスト・ピッカーと呼ばれるゴミ拾い人が、資源価値のあるものを回収しています。ベトナムでは貧しい人がやむなく行うのではなく、近隣の農家などが選別センター公認で行っているのが特徴です。こういった、使えるものは最後まで使いつくすという精神は、どこか日本の江戸時代に近いものを感じさせます。

一方、深刻なゴミ問題に直面している国も数多くあります。ケニアでは経済発展にともない。ごみが大量に増加。ナイロビのダンドラには、アフリカ最大といわれるごみ集積地ができています。そこには、1万頭以上の豚が放牧され、数千人のウェイスト・ピッカーがごみを拾い集めているといいます。トンガには、リサイクル企業はもちろん、ゴミを買い取る業者などもありません。行政の回収サービスも行き届いておらず、住民は野焼きなどでごみを処理するしかありませんでした。近年では、日本の支援による分別回収が行われ、業者に売却された金属類がニュージーランドに輸出されています。